積みかさねているもの

  • 2017.10.31 Tuesday
  • 10:35

 

 

 

 

「絵画のいろは2017展」は衆議院の選挙日程とも重なり天候もすぐれなかったにもかかわらず、多くの人に来ていただき無事終了することができました。入場者数400人超となったことは岩国の状況からみてかなりの盛会だといえるだろう。

また、中国新聞のみが告知、日刊いわくにだけが取材に応じてくれただけでこの結果ということは、ひとえに出品者各自の活動のたまものといっていい。いつものことながら、偶然にもシンフォニア会場の他の企画と重なったことが思いがけないこの結果へとつながったとも考えられる。

ぼくたちは庁舎の記者クラブを通じて新聞各社やローカルテレビ局など案内してはいたのだが、どういうわけかほとんどマスコミの反応はなくこの事は数年来つづいている。だから、最近ではむしろ口コミで出品者各自の呼びかけでご案内することにしているのだが、まさしく予想通りの結果となった。

考えてみれば元々それが活動としてきわめてシンプルな形ともいえるし、大手マスコミの記事も最近の報道を見ているとNHKに象徴されるようにあまり当てにしてもいけないし、記者の知見や力量も当然のことながら問われているわけだから無理もいえないのである。

 

 

 

 

 

 

さて、総括でもないが今回の展覧会は楽しい雰囲気の会場となったことをいろいろな人から指摘された。そのことは個々の作品のみならず展示構成という点においてもある意味で子どもたちの作品が風通しのいい効果を果たしたのではないか、と思うのだがどうだろう。実はそのことはこの展覧会の狙いの一つでもあったのだが・・・。

10数年前のこの展覧会をふり返ってみても、そこそこの力量をもった人々がある程度抜けても質的な低下を招くこともなかった、と強く印象づけられたのも各自がレベルアップしているのだと思うのが自然な見方ではないか。

普段はあまり気がつかないものだが、このことは日々積みかさねているものが意外にも大きいのではないか、とあらためて気づかされるのだった。

山口県美展でも入選入賞している人の作品もあれば以前からその展覧会の常連の実録者も揃っていて、子どもの作品にしても全国公募の香月ジュニア大賞絵画展において入選入賞している子どもたちの力作も展示されているわけだから一概にはいえないけれど見劣りする展覧会であるはずもないし展示構成も見ごたえのある展覧会であることは間違いない。

岩国市教育委員会にも後援されている訳だから少しは行政の人や美術を指導する立場にある学校関係者にも来ていただきたいものである。たまたま、会期中に市美展関係の授賞式のようなものがあって、知り合いの高校の先生が一人立ち寄ってくれたのが幸いであった。

だが、絵を描きモノを作る者にとってはそんなことは大した問題じゃあないはずで、来年は「グループ小品展かぁ〜」「頑張るぞーっ」と、気持ちを立ち上げるのだ。

 

 

 

 

 

ここで本展の狙いでもあったのだが、子どもたちの作品と大人の作品についてあらためて考えてみたいと思うのだ。例えば、最近になってとりわけ知的障害者の描く作品やアールブリュットの可能性が注目され、生活と芸術、さらにプロとアマといった境界を透明化する動向があることに注目してみよう。

山口県美展の募集要項を見てもかつてのように日本画、洋画、書などといったカテゴリーは取りのぞかれ同一線上に並べられて審査が行われる。そこに、子どもの作品を導入しさらに表現の根源的な意味と可能性について考えてみたいのだ。「絵画のいろは展」の実践的な興味は実はそこにあると云えばいささか大袈裟に聞こえるだろうか。

ひと頃、未開社会の文化に学びそれらを相対的に捉えかえす文化人類学や無意識の存在の意味や偶然の出来事に因果関係を求める超現実主義的な考え方が注目されたことがあるけれど、子どもの絵画に学ぶことがあっていいのではないか、とぼくは本当にそう思っている。

確かに、ピカソやジョアン・ミロたちも子どもの造形やアフリカの土着的な造形に注目しその可能性を高めていったプリミティヴアートの存在も戦後日本の美術に多大な影響を与えたことも周知の通りなのだ。

 

「子どもは気持ちで描く」子どもとかかわってきた者の一人として前々からぼくはそう思っている。だから、自己中心的に描く視点変更とか転倒しているような描写にしても単なる過ちとして否定的にとらえるのではなく、子ども特有の原初的な感覚としてむしろ肯定的に捉えることにしている。例えば、コップを描くにしても入り口は丸くて底はこぼれないように直線で閉じられている、と説明的に気持ちで描写するのだ。

2005年、ぼくたちは「キッズパワープロジェクトー大人の子ども子どもの大人ー」という複合的な文化イベントを行った。イベントの重要なコンセプトとして考えたことも、ぼくたちが人として持ちあわせている『子ども性』に注目したのだった。

『子ども性』とは何か・・・。

つまり、大人も子どもも『子ども性』ともいうべき無垢なる感覚をもっていて子どもはリアルタイムでその『子ども性』を生きているとすれば、大人にもそなわっているはずの『子ども性』は肥大化した情報や意識によって後退しているかもしれないということだった。「絵画のいろは展」でも子どもたちの作品に異質な[風]通しを感じたのは、その感覚的な相違に起因しているとはいえないだろうか。

絵画はどうあるべきか、どういう絵画が発見されるべきなのか、ものさしとも云えるそのキーワードは何か、なお一層そのことを考える契機となることをぼくは願っている。

 

 

 

空の王さま

  • 2017.10.30 Monday
  • 21:56

ハトよ、ふるさとのあの空からとんでこい。ぼくとエバンズさんの夢といっしょに。

 

 

『空の王さま』(文ニコラ・デイビス 絵ローラ・カーリン 訳さくまゆみこ BL出版)という絵本をご紹介しましょう。

この絵本はJBBY会長のさくまゆみこさんが翻訳したもので、遠いイタリアからイギリスの炭鉱の町に越してきた一人の少年とその町に暮らすエバンズさんのお話です。

 

ぼくのふるさとは、お日さまが明るくて、おばあちゃんの店のバニラアイスのにおいがする場所。こしてきたこの町は、けむりがたちのぼり、石炭の粉のにおいがしている。

ぼくはよそ者ー

でも、エバンズさんにであってなにかが、かわりはじめた。いっしょにハトをとばし、いっしょに夢をおいかけはじめてから。(本文から)

 

二人はハトを遠くで放して所定の場所に帰ってくるまでの距離の長さを競いひたすらに待つ競技をめざすのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ご覧のように絵が素晴らしいですね。単に子どもの読みものとしてではなく絵本の可能性を信じて丁寧につくられているのがよく分かります。

別のいい方をすれば絵本文化の違いとでもいうべきかも知れませんね。

 

そしてもう一冊。

 

 

 

 

こちらは『ちいさなちいさなちいさなおひめさま』(ぶん二宮由紀子 え北見葉胡 BL出版)という絵本です。

 

さてさて・・・、

 

だれも見たことがない  

うつくしいおひめさまはーーー⁉   (小さい)

 

絵画のいろは展2017開幕

  • 2017.10.19 Thursday
  • 18:52

絵画のいろは展2017が開幕しました。

心配された天候も何とか持ちこたえられ、前日のセッティングも難なく順調に進められました。ほぼ予定通りの展示が参加メンバーの手で完成することができました。

100人越えとなった初日の入りもまずまずで会場は活気にあふれていました。

 

 

昨年の県美展に入選した作品もきれいに展示され会場を引き締めています。

 

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子どもたちの作品が大人気。音の出る作品や動く作品など手に取って鑑賞していました。とりわけ、『からくり人形』にはまった子や大きな『ヤジロベー』を不思議そうに見つめる子どものようすが印象的でした。

 

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スミさん(御年80越えのおばあちゃん)の大作が眼を引きます。

 

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海斗くんの『赤いパプリカ』、陽菜のぼくを描いた『絵画』、鼎嵐くんのお相撲さんの『ヤジロベー』、おもしろ作品がところせましと展示されています。

 

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左の2作が彩乃ちゃん、右の2作が美帆子ちゃんの絵画、パワーがありますね。

 

 

今年の山口県美展で受賞した浜桐さんの作品。

 

 

野原画伯の黒の絵画も異彩を放っていてきれいです。

 

 

今年の山口県美展で入選を果たした石川さんの作品。

 

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昨日は場所を移してオープニングパーティーで盛り上がり楽しい3時間があっという間に過ぎてしまい展覧会の初日を終了しました。

さてさて、明日はどういうことになるのかなぁ〜

 

絵画のいろは展2017について

  • 2017.10.10 Tuesday
  • 16:17

日時 2017年10月18日(水)−22日(日)   

           10:00−18:00
 会場 シンフォニア岩国企画展示ホール

 

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この展覧会は、絵を描きはじめて間もない人から山口県美展・岩国市美展など他の美術コンクールや個展などで活躍している大人に加えて、これまでTRY展として活動してきた子どもたちを含む初心者から経験者までの作品を一堂に展示する原田美術教室の研究生およそ30人で構成するものです。
  アトリエや教室での日ごろの研究成果を発表すると同時に、人と人、表現と表現のふれあうなかで単に技術の習得のみならず、絵を描くことで何を考え、何を発見することができるかということ。また、「文化的な営みと豊かさ」あるいは「活力と潤いのある生活」とは何か、という問いについて考える契機となることを願っています。「絵画のいろは」とはこのように制作上の技術の問題だけでなく、日常生活での活力や潤いのある生活のあり方を考える実践的問いかけに他ならないのです。
  特に今回は子どもたちの作品を含めてそのことについて考える風通しのいい会場構成となっています。研究生として親睦を兼ねたコミュニケーションを大切にし、互いの作品を認める楽しさや表現の多様性について考え、アートのおもしろさを伝えることで地域の芸術文化活動のささやかな普及と発展に寄与したいと願うものです。

 

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石川幸子/2017年山口県美展入選

 

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山本恵子/2013−16年山口県美展入選入賞

 

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野原都/1992−98年山口県美展入選入賞

 

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浜桐陽子/2017年山口県美展佳作賞受賞

 

玉井康子/山口県美展入選予定者(笑)

 

 

子どもの作品が大人気

 

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これまでも生活と芸術の境界をどのように考え、日常生活の中に芸術の作用をいかに活用できるか、ということについて考えてきたけれど、限界芸術論を含めて表現の可能性を素朴派やプリミティヴアート、さらに知的障害者の描くアウトサイダーアートや子どもたちの作品がもつ純粋意識ともいうべきパワーと表現に注目してきました。
  今回の「絵画のいろは展」では、そのことをふまえて子どもたちの作品と大人の作品をあえて同列に並べ、形式にとらわれることなく表現の多様性と可能性について考える風通しのいい展覧会となっています。
  この機会により多くの方々とともに作品を通して触れあえることを楽しみにしています。

 

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原田文明/賛助出品

 

お問い合わせは原田まで  TEL.0827‐43‐0835
原田文明公式サイト http://www.bummei-harada.com/

愛宕ヒルズ

  • 2017.10.09 Monday
  • 11:34

 


これが米軍再編にともない思いやり予算で建設されたシェルターの完備された超高級米軍住宅の『ATAGO HILLS』だ。ここから先は岩国市でもアメリカだ。

 

 愛宕ヒルズのゲート

 

明日の衆議院議員選挙公示を前にして党首討論も熱を帯びてきてはいるが、不思議に思うのはどの党も改憲とか安保法制の是非を問うとはいうものの日米地位協定の問題に触れることはない。

地位協定や合同委員会のあり方を不問にしたままでは基本的人権、平和主義、国民主権を柱とする憲法を論じてもむなしい気がしないのかと思う。それが岩国の視点であり沖縄の視点ではないかとぼくは思うのだ。

この国の方向性を考える選挙ならオール沖縄の視点に学ぶことがまっとうな考えではなかろうか。

 

米軍スタジアム周辺

 

市の中央部に位置するここには、かつては鎮守の森といわれた愛宕山があったのだが山は切り取られ、騒音被害や工場群を避け危険性を少しでも緩和するとして基地滑走路を沖合に移設することになったのだが、強襲揚陸艦も接岸可能な極東最大級の軍事基地となった。その跡地にこのように贅沢な米軍住宅や米軍スタジアムなどのスポーツ施設がつくられたというわけだ。

この施設の利用を共有できることが合同委員会で了解されたなどと市の上層部は喜んでいるが、岩国は「標的の街」になり市内の10人に一人はアメリカ軍関係者ということになる。

 

このことは原発と同様に後世へのツケとして取り返しのつかない事態を招き、そして次世代の人々に対して責任を取ることもできない。そのようなことをどうしてできるのかといつも思うのだが・・・

 

 急ピッチで進められる陸上競技場周辺工事

今日の一日

  • 2017.10.08 Sunday
  • 22:06

 

 

今日は久しぶりにいい天気。

ぼくが指導している保育園の運動会に案内されるまま行ってみるとタイミング良くこんなプログラムをやっていた。戸惑いながらも子どもたちは練習してきた通り頑張っていた。しばらく見ていると後ろから背中をつつく奴がいるのでふりかえると教室に来ている中学生の七美姉妹だった。「あっ、来ていたのか」というとお母さんらも向こうにいるとのこと。

このほかにも親になった教え子やいろいろな人に会えて調度いい運動会になった。

 

 

午後からは吟剣詩舞道連盟の大会「吟と歌と舞の祭典」にお邪魔することに・・・。

ここも教室の研究生Tさんが李白の「静夜思」を歌うということだったのだ。普段のようすとは違って着物姿で舞台に上がったTさんは堂々としていていつになく晴れやかだった。

 

その後、アトリエで展覧会の準備をしに行くと、香月泰男美術館からジュニア絵画大賞展に応募した丸山苺叶ちゃん(岩国小1)が銅賞を受賞したとの嬉しい知らせがきていた。今年はずいぶん知らせがおくれたので「全滅だったのかな」と少し案じていたのでびっくり、これは良かったぁ・・・

 

丸山苺叶(岩国小1) やってくれましたね!

 

これを機会に香月泰男という画家に家族ぐるみで興味をもっていただき少しでもアートの世界をひろげてほしいものである。ロングランで開催されるので出来れば一泊計画で家族で楽しいんでほしいのであ〜る。

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原田美術教室の活動


♛ 第16回絵画のいろは展
2023年11月15日wed〜11月19日sun
10:00〜18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール


この展覧会は、絵を描きはじめて間もない人から山口県美展・岩国市美展など他の美術コンクールや個展などで活躍している大人に加えて、これまでTRY展として活動してきた子どもたちを含む初心者から経験者までの作品を一堂に展示する原田美術教室の研究生およそ20名で構成するものです。 アトリエや教室での日ごろの研究成果を発表すると同時に、人と人、表現と表現のふれあうなかで単に技術の習得のみならず、絵を描くことで何を考え、何を発見することができるかということから、「文化的な営みと豊かさ」あるいは「活力と潤いのある生活」とは何か、という問いについて考える契機となることを願っています。 「絵画のいろは」とは、このように制作上の技術の問題だけでなく、日常生活での活力や潤いのある生活のあり方を考える実践的問いかけに他ならないのです。 特に今回は子どもたちの作品を含めて広く深くそのことを考える風通しのいい構成となっています。研究生として親睦を兼ねたコミュニケーションを大切にし、互いの作品を認める楽しさや表現の多様性について考え、アートのおもしろさを伝えることで地域の芸術文化活動の普及と発展に寄与したいと願うものです。














子どもの作品が大人気








♛ グループ小品展2024
2024年10月3日(水)〜10月6日(日)
10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール



この展覧会グループ小品展は、絵を描きはじめて間もない初心者から山口県美展・岩国市美展など他の美術コンクールや個展などで活躍している経験者までを含む原田美術教室の研究生で構成され、絵画のいろは展とともに隔年で開催するものです。 今回のグループ小品展では、日ごろの研究成果を発表すると同時に、人と人、表現と表現のふれあうなかで単に技術の習得のみならず、絵を描くことで何を考え、何を発見することができるかということ。そして、「文化的な営みと豊かさ」あるいは「活力と潤いのある生活」とは何か、という問いについて考えることを目的としています。 また、グループ研究生として互いの親睦を兼ねたコミュニケーションを大切にし、互いの作品を認める楽しさを発見すると同時に表現の多様性について考え、アートの楽しさを伝えることで地域の芸術文化活動の普及と発展に寄与し貢献したいと願うものです。









 

♛ 山口県美術展覧会2019 2019年2月14日(木)−3月3日(日)9:00−17:00(入館は16:30まで) 
休館日:2月18日(月)、25日(月)
観覧料/一般:500(400)円 学生:400(300)円( )内は20人以上の団体料金
*18歳以下は無料 *70才以上の方、中東教育学校、高等学校、特別支援学校に在学する方等は無料 *障碍者手帳等をご持参の方とその介護の方1名は無料
山口県立美術館

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優秀賞 藤本スミ

入選 玉井康子

入選 中村みどり



佳作賞 浜桐陽子

原田文明の現況2021展


2021年5月19日wed−5月23日sun
10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール



本展は1990年代のはじめ頃から具体絵画として精力的に発表してきた一連の絵画作品とドローイングとインスタレーションによる新作13点で構成するのものです。













原田文明展 ドローイングインスタレーション2018


2018年11月21日wed−25日sun 10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール











ドローイングインスタレーションは、ここ十数年にわたって絵画表現の可能性について考えてきた一連の営為の中で、偶然とも必然ともいえる結果として発見されたものです。
私はこれまで「具体絵画」と称して、物質(素材)が表現目的の手段として扱われるのではなく、物質のあり方それ自体を色彩やフォルムと等しく絵画の重要な構成要素とする一連の作品を制作してきました。
ここでは行為と物質がもたらす一回性の出来事さえも絵画を成立させる重要な要素として捉え、作為的な感性によって空間へと展開されています。いうまでもなく、そのことによって生成される新しい意味と存在の可能性をリアルな知覚的世界として位置づけ、形而上学的な意味を問いかける主知的な営為と考えてきたのです。
さらに、その表現形式のあり方は平面的な二次元の世界から室内空間(場所)を構成する三次元的な世界へとその機能性を拡張し、ドローイングインスタレーションともいうべき様式へと変容させ意識化されてきたとも云えます。
私にとってもはや絵画は多元的な空間へと自在に移ろうイリュージョンの世界へと変容してきたと云うべきかもしれません。それは身体性を意識したメタフィジカルな実践として存在論的に見えかくれする場面への接近であり、換言すれば世界を包み込む現存(リアルな世界)への希求の現われというべきかも知れないのです。
本展はこれまでの多岐にわたる活動をふまえてたどりついた新作ドローイングインスタレーションの様式にさらに色彩的要素を取り入れることによって新境地への挑戦と可能性を探求する原田文明の現況とその一端を示すものです。

里の芸術一揆「里山 ART Project 吉賀」




本プロジェクトは隔年式のアートビエンナーレとして、将来の「地域」「文化」「くらし」を考える文化的なムーブメント(運動)をつくることを目的とするものです。また、地域の農耕文化や伝統に学び、芸術文化の振興発展と普及のみならず、「生活と芸術」「過去と現在」「人と地域」の交流を軸とする文化による地域づくりについて考えるものです。 このことは、吉賀町がこれまで取り組んできた自然との共存共生を願うエコビレッジ構想と合わせて、人間の営みとしての文化と里山の自然について考えることであり、里山に潜在する魅力とその可能性を再確認し文化意識の変革と活性化を推進するものです。 今回は、現代アートの最前線で活躍する8名のアーティストによる最新作を現地で制作し、地域住民とともにワークショップや生活文化など多方面での活発な交流が実現されるものと考えています。 2010年10月開催予定。

岩瀬成子話題の本棚


ジャングルジム(2022年ゴブリン書房)


ひみつの犬(2022年岩崎書店)
「いい人間になるのって難しいよ」とお姉ちゃんは言った。(p238)
児童文学として哲学的な問いをふくむシリアスな問題を子ども特有の感覚と生き生きとした表現で描いた長編物語。


わたしのあのこあのこのわたし(2021年 PHP研究所)

すれちがいながらも 助け合う ふたりの物語

秋ちゃんはすごく怒っていた。「とりかえしがつかない」と秋ちゃんはいった。
「二度と手に入らない」ともいった。どの言葉もわたしに命中した。
きいている途中から心臓がどきどきしはじめた。
わたしは秋ちゃんの怒った顔だけを見ていた。
秋ちゃんの怒りがどんどんふくらんでいくのがわかった。
秋ちゃんはわたしをゆるしてくれないかもしれない。


ネムノキをきらないで(2020年 文研出版)
この物語はおじいさんの家の庭にあるネムノキをきる話からはじまる。ぼくはネムノキをきることに反対だが枝がのびすぎてあぶなくなったから樹木医さんに相談して剪定してもらうことになった、ということだ。
「だめ、だめ。」と、ぼくは泣きながらいった。「こまったなあ。」とおじいさんはいった。お母さんはぼくの頭をなでようとした。ぼくはその手をふりはらった。「ばかだ。おとなはみんな大ばかだ。」ぼくにはもっといいたいことがあった。ネムノキについて。でも、どういえばいいかわからなかった。(…略)胸のなかは嵐のようだった。いろいろな気もちがぶつかり合っていて、どうすればもとのような落ち着いた気もちになれるのかわからなかった。(本文よりp16〜17)
家に帰った伸夫はつぎの朝、自分の部屋をでるとき何も知らずに柱をとおりかかったイエグモをつぶしてしまったことに気づく。


おとうさんのかお(2020年 佼成出版)

岩瀬成子の最新作「おとうさんのかお」が佼成出版社から出版されました。

「遠くを見ろっていったんだよね。おとうさん」と、わたしはいいました。「え」と、おとうさんはわたしをみました。「わたし、思いだした。このまえ、大川で思いだしかけていたこと。じてん車のれんしゅうをしていたときのこと。おとうさんは、『目の前ばっかり見てちゃだめ。もっと先のほうを見なきゃ』っていったよ」「そうだったかな」「『先のほうだけでもだめ、ときどき、ずっと遠くを見るんだ。ずっとずっと遠くだよ。山のむこう遠く』っていったよ」(本文よりp87)


もうひとつの曲り角(2019年 講談社)
野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化賞大賞、IBBYオナーリスト賞など数々の賞を受賞する岩瀬成子氏の最新長編作品。

柵には半開きになった木の扉がついていて、その扉に「どうぞお入りください」と青色のマジックで書かれた板がぶらさがっていた。 「いやだ。あたしはそんなところへは、ぜったいに入らないから」ときこえた。 えっ。どきんとした。 庭木のむこうからだった。わたしにむかっていったんだろうか。 わたしは耳をすまして、木々にさえぎられて見えない庭のようすをうかがった。 しんとしていた。 だれがいるんだろう。 わたしはぶらさがっている板をもう一度見た。 それから足音を立てないようにして、そっと扉のあいだから庭に入っていった。しかられたら、すぐににげだすつもりだった。ちょっとだけ、のぞいてみたかった。──本文より。 小学五年のわたしと中一の兄は二ヶ月前、母の理想の新しい家、市の東側から西側へ引っ越してきた。この町で通い出した英会話スクールが休講だったので、わたしはふと通ったことのない道へ行ってみたくなる。道のずっと先には道路にまで木の枝が伸びている家があり、白い花がちらほらと咲いて・・・・。

日本絵本賞、講談社出版文化賞、ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、オランダ銀の石筆賞など受賞の酒井駒子氏による美しい装画にも注目!

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地図を広げて(2018年 偕成社)
父親と2人暮らしの鈴のもとに、母親が倒れたという知らせがとどく。母はそのまま亡くなってしまい、母親のもとにいた弟の圭が、鈴たちといっしょに暮らすことになった。 たがいに離れていた時間のこと、それぞれがもつ母親との思い出。さまざまな思いをかかえて揺れ動く子どもたちの感情をこまやかにとらえ、たがいを思いやりながら、手探りでつくる新しい家族の日々をていねいに描いた感動作。


ともだちのときちゃん(2017年 フレーベル館)
フレーベル館【おはなしのまどシリーズ】として出版された岩瀬成子の新刊『ともだちのときちゃん』は、イメージの広がりとこの年頃の子どもが経験する瑞々しい出会いにあふれています。(略)著者はそういう細部をみつめる子どもの感情をとてもよく描いていて、このお話しの最後のところでたくさんのコスモスの花にかこまれて青い空と雲をみつながら「ぜんぶ、ぜんぶ、きれいだねえ」とふたりの気持ちをつたえています。

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ちょっとおんぶ(2017年 講談社)
6才のこども特有のイノセントな感覚世界。この年ごろの人間だけが経験できる世界認識のあり方が本当にあるのかもしれない。あっていいとも思うし、ぼくはそれを信じていいようにも思います。名作「もりのなか」(マリー・ホール・エッツ)が普遍的に愛読されるのもこの点で納得できる気がするのです。
この本の帯にあるように、絵本を卒業する必要はないけれど絵本を卒業したお子さんのひとり読みや、読みきかせにぴったり!といえるかもしれません。どうぞ、手にとって読んでみてくださいね。

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マルの背中(2016年 講談社)
父と弟の理央が暮らす家を出て母と二人で生活する亜澄は、駄菓子屋のおじさんから近所で評判の“幸運の猫”を預かることに。野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化大賞受賞作家による感動作!

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ぼくが弟にしたこと(2015年 理論社)
成長の予兆を感じさせるように父と再会した麻里生には、次第に人混みにまぎれていく父の姿は特別な人には見えなかった。著者は帯にこう書き記している。どの家庭にも事情というものがあって、その中で子どもは生きるしかありません。それが辛くて誰にも言えない事だとしても、言葉にすることで、なんとかそれを超えるきっかけになるのでは、と思います。

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きみは知らないほうがいい(2014年 文研出版)
2015年度産経児童出版文化大賞受賞。
クニさんの失踪、クラスメートの関係性が微妙に変化するいくつかのエピソード、昼間くんの手紙、錯綜するその渦の中で二人の心の変化と移ろいを軸に物語は複雑な展開をみせる。
最終章、米利の手紙にはこう書いてある。それはぐるぐると自然に起きる渦巻のようなものだった。「いじめ」という言葉でいいあらわせない出来事があちこちで渦巻いている学校。
それでも明るい光に照らされている学校。そして苦い汁でぬるぬるとしている学校。学校よ、と思う。そんなに偉いのか。そんなに強いのか。そんなに正しいのか。わたしは手でポケットの上をぽんぽんとたたいた。

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あたらしい子がきて(2014年 岩崎書店)
前作『なみだひっこんでろ』の続編のようでもあり、“みき”と“るい”姉妹のお話となっているけれど、ストーリーそのものはそれとはちがうまったく新しいものである。 ここでは、お母さんのお母さんとその姉、つまり“おばあちゃん”と“おおばあちゃん”という姉妹がいて、知的障害のある57歳の“よしえちゃん”とその弟の“あきちゃん”の姉弟が登場する。 このように“みき”と“るい”姉妹の周りにもそれぞれの兄弟が重層的に描かれている。
第52回野間児童文芸賞、JBBY賞、IBBYオナーリスト賞を受賞。

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くもりときどき晴レル(2014年 理論社)
ひとを好きになるとどうして普通の気持ちじゃなくなるのだろう。誰でもこのような不思議な感情に戸惑いを感じることがある。恋愛感情とも云えないやりきれない気持ちの動きと戸惑いをともなう心理状態のことだ。 本著は、「アスパラ」「恋じゃなくても」「こんちゃん」「マスキングテープ」「背中」「梅の道」という6つの物語で構成された短編集であるけれど、思春期を向かえる少し前になるそれぞれの子どもの現在としてそのやわらかい気持ちの揺れを瑞々しいタッチで描いたもの。

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なみだひっこんでろ(2012年 岩崎書店)
今年度第59回課題図書に決定!

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ピース・ヴィレッジ(2011年 偕成社)


大人になっていく少女たちをみずみずしく描く
「最後の場面のあまりのうつくしさに言葉をうしなった。私たちは覚えている、子どもからゆっくりと大人になっていく、あのちっともうつくしくない、でも忘れがたい、金色の時間のことを。」 角田光代
基地の町にすむ小学6年生の楓と中学1年生の紀理。自分をとりまく世界に一歩ずつふみだしていく少女たちをみずみずしく描いた児童文学。
偕成社から好評新刊発売中!

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だれにもいえない(岩瀬成子著・網中いづる画、毎日新聞社)


小さな女の子のラヴストーリー。
点くんをきらいになれたらな、と急に思った。 きらいになったら、わたしは元どおりのわたしにもどれる気がする。 だれにも隠しごとをしなくてもすむし、 びくびくしたり、どきどきしたりしなくてもすむ。(本文より)
4年生の女の子はデリケートだ。 せつなくて、あったかい、岩瀬成子の世界。 おとなも、子どもたちにもおすすめの一冊。

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まつりちゃん(岩瀬成子著、理論社)
この作品は連作短編集という形式で構成され、抑制の効いた淡々とした表現で描かれているところが新鮮である。各篇ごとにちがった状況が設定され登場人物(老人から子ども)たちはそれぞれ不安、孤独、ストレスといった現代的な悩みを抱えている。その中で全篇を通して登場する“まつりちゃん”という小さな女の子は、天使のように無垢なる存在として現れる。その女の子と関わることによって物語は不思議なこと癒しの地平へと開示され、文学的世界が立ち上がるかのようだ。 岩瀬成子の新しい文学的境地を感じさせる魅力的な一冊ともいえる。

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オール・マイ・ラヴィング(岩瀬成子著、集英社)

■ 1966年、ビートルズが日本にやって来た!14歳の少女が住む町にビートルズファンは一人だけだった。 ■ 「オール マイ ラヴィング」とビートルズは歌う。聴いていると、だんだんわたしは内側からわたしではなくなっていく。外側にくっついているいろいろなものを振り落として、わたしは半分わたしではなくなる。ビートルズに染まったわたしとなる。 ■ 岩瀬成子の新刊、1月31日集英社から好評発売中。“あの時代”を等身大の少女の目でみつめた感動の書き下ろし長編小説 『オール・マイ・ラヴィング』 ■ ビートルズ ファン必見の文学はこれだ!

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そのぬくもりはきえない(岩瀬成子著、偕成社)
■ 日本児童文学者協会賞受賞


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朝はだんだん見えてくる(岩瀬成子著、理論社) ■ 1977年、岩瀬成子のデビュー作。本書はそのリニューアル版で理論社の『名作の森』シリーズとして再発行されたもの。

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