Wall of the bamboo

  • 2010.12.30 Thursday
  • 15:28



Wall of the bamboo / 2010 / 竹 円柱(建築構造物) / 200X100X500cm / 周東パストラルホール


岩国市周東町が位置する玖西盆地では古くから伝統工芸として竹細工の文化がある。今も竹を使った工芸作品や竹墨の生産が盛んに行われている。
この作品「Wall of the bamboo」の制作を“竹墨の会”の方々とともにできないかと呼びかけたのだが実現にはいたらなかった。今回のこの竹は岩国の“モウソウダケ”を使用している。







あ・り・が・と・う

  • 2010.12.29 Wednesday
  • 15:19
27日、錦蔵を土にもどしてあげた。
昨年11月1日、癌とのながい闘病の末に息をひきとった錦蔵は骨壷に納められたままだった。
一年を過ぎたのでそろそろ土に戻してあげようと思っていたのだ。
庭のすみっこにある紫陽花の傍でよく日向ぼっこをしていたのでそこに埋めてあげた。
入れ替わりにシズという子猫がやってきたのだが、こいつにはいま手を焼いている。
キンちゃんとの想い出はいろいろある。
このブログでもいろいろと紹介した。

いい猫だったなあ。

キンちゃん、本当に「あ・り・が・と・う」



タンゴスペシャル

  • 2010.12.28 Tuesday
  • 13:39
今年のクリスマスは小松亮太のライブコンサートに。
先ごろ展覧会を終えたばかりの周東パストラルホールで、バンドネオンの小松亮太とコントラバス、ギターのスペシャルトリオ編成で行われたタンゴを楽しんだ。
このホールでの音を想像しながら楽しみにしていたのだが、当日は想像を超える素晴らしいコンサートとなった。



話題のバンドネオン奏者・小松亮太。
エンターテイメントな要素を備えた素晴らしいミュージシャンだ。
タンゴの歴史、楽曲や楽器の話を織り交ぜて軽妙なおしゃべりとともに観衆の興味を誘う。
この日が今年の仕事納めともいっていた。
一緒に参加していたブラボーというおもしろい名前のギタリストのソロも良かった。

彼らはこのホールの音響の素晴らしさ、とりわけその自然な音の響きをたたえ全国的にみても数少ないいいホールだといっていた。
このホールのことは展覧会をやってみて斬新な空間のおもしろさについては既に確認できていたが、音響的に素晴らしいことも折り紙つきということになった。
この建物はなんとしてでも使いこなさなければいけない。そのための人材、管理運営システムの確立と地元サポーターの組織化を急務としていることをあらためて実感している。

二部編成で行われ第二部はピアソラの曲を中心に構成され、さすがにテレビやコマーシャルで話題となった曲を取り入れた構成もお見事。

トリオという編成なので第一楽章しかできなかったピアソラ作曲の「バンドネオン協奏曲」を今度はオーケストラで聴いてみたいとも思う。お馴染みの「リベルタンゴ」「アディオス・ノニーノ」も良かったが、ぼくはアルゼンチンの田舎町のフォーク的(タンゴではない)な「牛車にゆられて」など哀愁を感じさせる楽曲がいいなあ、と思った。


何はともあれ、メリークリスマスだ!



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Drawing Installation 10-03

  • 2010.12.27 Monday
  • 13:29

撮影:磯谷直


Drawing Installation 10-03 / 2010 / 紙 木炭 木材 / 230X2000cm


ドローイングインスタレーションは、ここ十数年にわたって絵画表現の可能性について考えてきた一連の仕事の中で、偶然とも必然ともいえる結果として発見されたものです。
私はこれまで「具体絵画」と称して、物質(素材)が表現目的の手段として扱われるのではなく、物質のあり方それ自体を色彩やフォルムと等しく絵画の重要な構成要素とする一連の作品を制作してきました。そこでは行為と物質がもたらす一回性の出来事をも絵画を成立させる重要な要素として捉え、作為的な感性によって空間へと展開されています。そのことによって生成される新しい意味と存在の可能性をリアルな世界として位置づけ、その意味を問いかける主知的な営為と考えてきたのです。したがって、その作用のあり方は平面的な二次元の世界から室内空間(場所)を構成する三次元的な世界へとその機能性を拡張し、ドローイングインスタレーションともいうべき様式へと変容させ意識化されてきたとも言えます。
私にとってもはや絵画は多元的な空間へと自在に移ろうイリュージョンの世界へと変容してきたと言うべきかもしれません。それは身体として、あるいは存在として確認されるべき対象でありそこに見え隠れするもの。換言すれば、世界を包み込む現存(リアルな世界)への希求の現われとなるのかもしれません。


 



な・め・る・な・よ

  • 2010.12.26 Sunday
  • 15:31


近頃、この猫がぼくの顔をなめてくるので困っている。
枕もとにぴたりとくっついてゴロゴロいいながらなめる。
目にきたときは力を入れて目を瞑る。口も。
薄くなった頭のてっぺんにきたときは増毛効果があるかななどと考える。
興奮して大騒ぎするときは怒る。
でも、しつこく騒ぐ。噛みついてじゃれる。
プーちゃんに慣れてもらわなければと思い、ときどき対面させる。
だが、なかなか認知するまでにいたらない。
最近のプーちゃんはストレスからなのか激太りしている。
からだは巨大なのだが気が小さい。
このチビ猫を認めてもらいたいのだがなあ〜。



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即興魂

  • 2010.12.25 Saturday
  • 11:17
岩国のぼくたちともお馴染みのコントラバス奏者・斎藤徹さんが、ブログtetsu's blogで「即興に関するよしなしごと」という興味深い記事を書かれています。ご一読を!
ぼくもときどき即興(?)的にコメントしています。


豊富な経験に基づく“即興魂”についての見解は大変説得力があり読み応えがあります。おだやかな風貌から受ける印象とは大違い。ぶっ飛ばされるほどの凄みがあります。即興家としての斎藤さんの“立ち位置”は実に見事というほかありません。

彼はORBITOのライナーにこう書いたとあります。

「何で、こんなことになっちまったのだろう?貴重な楽器や弓を手に入れて、弦もピックも松脂も諸パーツも厳選して、イヤって言うほど練習をして、イヤって言うほどの世界中の音楽を聴いて、いろいろな所に旅して、家族ももってさ、余裕のないくらしをして、「この音」だぜ。「普通の」音なんかほとんどありゃしない。誰だってできるんじゃない?ありったけの自分を担保にして、1時間、音を出し続ける。そこまでして欲しいものがそこにあるの?答えは”YES” 完全アコースティック、完全即興、1時間キッカリ、合わせて110年の軌跡(齋藤徹)」


どうです?おもしろいでしょう。

へそ曲がりと言えばへそ曲がり、あまのじゃくと言えばあまのじゃく、不良と言えば不良かもしれませんが、そういう立ち位置でなければ経験できない世界が確かにある。ぼくは美術家としていろいろやってきて大いに納得できるところがあります。

斎藤さんは演奏家としてだけではなく、生き方と即興魂をクロスさせて世界をみつめようとしています。すべての様式を超えて成り立つあるがまま、なすがままの表現、そこではじめて発見できる存在へ限りなく接近しているともいえます。

これはちょっとすごいですよ、ホント。




Work1992

  • 2010.12.24 Friday
  • 13:30



Work 作品 / 1992 / 合板 和紙 鉛筆 新聞 / 230.0 X 400.0cm / 第46回山口県美展



 

年の瀬の墓参り

  • 2010.12.24 Friday
  • 09:07
今日はクリスマスイヴ
といっても、子育ての終わったわが家では街中のイルミネーションを眺めては年の瀬を意識する程度のことになっている。最近ではむしろ、年の瀬の掃除や墓参りのことが大きな比重を占めることになった気がする。
昨日もお花を買って、周南や山口方面の墓参りへ。
幸い天気はよくとても暖かかった。




人間の記憶とはいい加減なもので、お参りする墓の所在が記憶ちがいでなかなか見つからなくて困った。
久しぶりに岩瀬長五郎(江戸中期の宮大工)、カミさんの祖父になる實治らのやや離れたところにある墓所まで行くことに。
さすがに長五郎の墓はこけむしていてなかなか刻んである文字も読みづらい。やや小ぶりでシンプルなデザインの墓、角地にあると思っていたのだが、記憶ちがいだったことが判明した。

先代の墓を訪れるのもたまにはいいものだなと思う。
山口の熊野神社へはじめて参ったのだが、室町時代の様式をもつ風情のあるとてもいい神社だった。


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えんぴつデッサン

  • 2010.12.21 Tuesday
  • 15:49
子どもたちの教室では鉛筆デッサンをした。

でこぼこした観賞用の大きなゆずを描いた。

別のグループはレタリングを要する洗剤の容器を描いた。

どういうわけか子どもたちがデッサンをしたいのだと言う。

色で描くのが面倒になっているのか前々から言われていた。



今日は版画の版をつくるまでにして足並みをそろえることもあって残りの時間をデッサンにしたのだ。

頑張っていますね





先週、お休みの子は版つくりに懸命だ。



 
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庭木の剪定

  • 2010.12.19 Sunday
  • 17:31
今日は朝から庭の掃除。
展覧会でほったらかしになっていたので今回は少々気合を入れてやった。


内側から見た銀木犀


まずは、松の剪定に一苦労。
松といってもみんなが寄ってたかって勝手気ままに剪定するものだからどうにも形が決まらない。
最初はけっこうまとまった姿だったのだが、ぼくがいきなりやったのがいけなかった。
その後、別々の人がきてそれぞれ気の向くまま適当に。ある人は門かぶりをイメージしてばっさり。
誰が門かぶりにすると言ったか。
ぼくは愕然とみつめるだけ。

写真は銀木犀。
こちらは数年前までは黄ソケイに隠れていたのだが、それが通路を邪魔するというので取り除くことに。
だから、まだ形は整っていない。中途半端。


の剪定
された銀木犀

けっこうくたびれました。
でも、今日は天気が良く暖かかったので仕事ははかどってよかった。
明日の朝、軽トラックで処分することに。
今日はこれで終わりにする。


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原田美術教室の活動


♛ 第16回絵画のいろは展
2023年11月15日wed〜11月19日sun
10:00〜18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール


この展覧会は、絵を描きはじめて間もない人から山口県美展・岩国市美展など他の美術コンクールや個展などで活躍している大人に加えて、これまでTRY展として活動してきた子どもたちを含む初心者から経験者までの作品を一堂に展示する原田美術教室の研究生およそ20名で構成するものです。 アトリエや教室での日ごろの研究成果を発表すると同時に、人と人、表現と表現のふれあうなかで単に技術の習得のみならず、絵を描くことで何を考え、何を発見することができるかということから、「文化的な営みと豊かさ」あるいは「活力と潤いのある生活」とは何か、という問いについて考える契機となることを願っています。 「絵画のいろは」とは、このように制作上の技術の問題だけでなく、日常生活での活力や潤いのある生活のあり方を考える実践的問いかけに他ならないのです。 特に今回は子どもたちの作品を含めて広く深くそのことを考える風通しのいい構成となっています。研究生として親睦を兼ねたコミュニケーションを大切にし、互いの作品を認める楽しさや表現の多様性について考え、アートのおもしろさを伝えることで地域の芸術文化活動の普及と発展に寄与したいと願うものです。














子どもの作品が大人気








♛ グループ小品展2024
2024年10月3日(水)〜10月6日(日)
10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール



この展覧会グループ小品展は、絵を描きはじめて間もない初心者から山口県美展・岩国市美展など他の美術コンクールや個展などで活躍している経験者までを含む原田美術教室の研究生で構成され、絵画のいろは展とともに隔年で開催するものです。 今回のグループ小品展では、日ごろの研究成果を発表すると同時に、人と人、表現と表現のふれあうなかで単に技術の習得のみならず、絵を描くことで何を考え、何を発見することができるかということ。そして、「文化的な営みと豊かさ」あるいは「活力と潤いのある生活」とは何か、という問いについて考えることを目的としています。 また、グループ研究生として互いの親睦を兼ねたコミュニケーションを大切にし、互いの作品を認める楽しさを発見すると同時に表現の多様性について考え、アートの楽しさを伝えることで地域の芸術文化活動の普及と発展に寄与し貢献したいと願うものです。









 

♛ 山口県美術展覧会2019 2019年2月14日(木)−3月3日(日)9:00−17:00(入館は16:30まで) 
休館日:2月18日(月)、25日(月)
観覧料/一般:500(400)円 学生:400(300)円( )内は20人以上の団体料金
*18歳以下は無料 *70才以上の方、中東教育学校、高等学校、特別支援学校に在学する方等は無料 *障碍者手帳等をご持参の方とその介護の方1名は無料
山口県立美術館

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優秀賞 藤本スミ

入選 玉井康子

入選 中村みどり



佳作賞 浜桐陽子

原田文明の現況2021展


2021年5月19日wed−5月23日sun
10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール



本展は1990年代のはじめ頃から具体絵画として精力的に発表してきた一連の絵画作品とドローイングとインスタレーションによる新作13点で構成するのものです。













原田文明展 ドローイングインスタレーション2018


2018年11月21日wed−25日sun 10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール











ドローイングインスタレーションは、ここ十数年にわたって絵画表現の可能性について考えてきた一連の営為の中で、偶然とも必然ともいえる結果として発見されたものです。
私はこれまで「具体絵画」と称して、物質(素材)が表現目的の手段として扱われるのではなく、物質のあり方それ自体を色彩やフォルムと等しく絵画の重要な構成要素とする一連の作品を制作してきました。
ここでは行為と物質がもたらす一回性の出来事さえも絵画を成立させる重要な要素として捉え、作為的な感性によって空間へと展開されています。いうまでもなく、そのことによって生成される新しい意味と存在の可能性をリアルな知覚的世界として位置づけ、形而上学的な意味を問いかける主知的な営為と考えてきたのです。
さらに、その表現形式のあり方は平面的な二次元の世界から室内空間(場所)を構成する三次元的な世界へとその機能性を拡張し、ドローイングインスタレーションともいうべき様式へと変容させ意識化されてきたとも云えます。
私にとってもはや絵画は多元的な空間へと自在に移ろうイリュージョンの世界へと変容してきたと云うべきかもしれません。それは身体性を意識したメタフィジカルな実践として存在論的に見えかくれする場面への接近であり、換言すれば世界を包み込む現存(リアルな世界)への希求の現われというべきかも知れないのです。
本展はこれまでの多岐にわたる活動をふまえてたどりついた新作ドローイングインスタレーションの様式にさらに色彩的要素を取り入れることによって新境地への挑戦と可能性を探求する原田文明の現況とその一端を示すものです。

里の芸術一揆「里山 ART Project 吉賀」




本プロジェクトは隔年式のアートビエンナーレとして、将来の「地域」「文化」「くらし」を考える文化的なムーブメント(運動)をつくることを目的とするものです。また、地域の農耕文化や伝統に学び、芸術文化の振興発展と普及のみならず、「生活と芸術」「過去と現在」「人と地域」の交流を軸とする文化による地域づくりについて考えるものです。 このことは、吉賀町がこれまで取り組んできた自然との共存共生を願うエコビレッジ構想と合わせて、人間の営みとしての文化と里山の自然について考えることであり、里山に潜在する魅力とその可能性を再確認し文化意識の変革と活性化を推進するものです。 今回は、現代アートの最前線で活躍する8名のアーティストによる最新作を現地で制作し、地域住民とともにワークショップや生活文化など多方面での活発な交流が実現されるものと考えています。 2010年10月開催予定。

岩瀬成子話題の本棚


ジャングルジム(2022年ゴブリン書房)


ひみつの犬(2022年岩崎書店)
「いい人間になるのって難しいよ」とお姉ちゃんは言った。(p238)
児童文学として哲学的な問いをふくむシリアスな問題を子ども特有の感覚と生き生きとした表現で描いた長編物語。


わたしのあのこあのこのわたし(2021年 PHP研究所)

すれちがいながらも 助け合う ふたりの物語

秋ちゃんはすごく怒っていた。「とりかえしがつかない」と秋ちゃんはいった。
「二度と手に入らない」ともいった。どの言葉もわたしに命中した。
きいている途中から心臓がどきどきしはじめた。
わたしは秋ちゃんの怒った顔だけを見ていた。
秋ちゃんの怒りがどんどんふくらんでいくのがわかった。
秋ちゃんはわたしをゆるしてくれないかもしれない。


ネムノキをきらないで(2020年 文研出版)
この物語はおじいさんの家の庭にあるネムノキをきる話からはじまる。ぼくはネムノキをきることに反対だが枝がのびすぎてあぶなくなったから樹木医さんに相談して剪定してもらうことになった、ということだ。
「だめ、だめ。」と、ぼくは泣きながらいった。「こまったなあ。」とおじいさんはいった。お母さんはぼくの頭をなでようとした。ぼくはその手をふりはらった。「ばかだ。おとなはみんな大ばかだ。」ぼくにはもっといいたいことがあった。ネムノキについて。でも、どういえばいいかわからなかった。(…略)胸のなかは嵐のようだった。いろいろな気もちがぶつかり合っていて、どうすればもとのような落ち着いた気もちになれるのかわからなかった。(本文よりp16〜17)
家に帰った伸夫はつぎの朝、自分の部屋をでるとき何も知らずに柱をとおりかかったイエグモをつぶしてしまったことに気づく。


おとうさんのかお(2020年 佼成出版)

岩瀬成子の最新作「おとうさんのかお」が佼成出版社から出版されました。

「遠くを見ろっていったんだよね。おとうさん」と、わたしはいいました。「え」と、おとうさんはわたしをみました。「わたし、思いだした。このまえ、大川で思いだしかけていたこと。じてん車のれんしゅうをしていたときのこと。おとうさんは、『目の前ばっかり見てちゃだめ。もっと先のほうを見なきゃ』っていったよ」「そうだったかな」「『先のほうだけでもだめ、ときどき、ずっと遠くを見るんだ。ずっとずっと遠くだよ。山のむこう遠く』っていったよ」(本文よりp87)


もうひとつの曲り角(2019年 講談社)
野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化賞大賞、IBBYオナーリスト賞など数々の賞を受賞する岩瀬成子氏の最新長編作品。

柵には半開きになった木の扉がついていて、その扉に「どうぞお入りください」と青色のマジックで書かれた板がぶらさがっていた。 「いやだ。あたしはそんなところへは、ぜったいに入らないから」ときこえた。 えっ。どきんとした。 庭木のむこうからだった。わたしにむかっていったんだろうか。 わたしは耳をすまして、木々にさえぎられて見えない庭のようすをうかがった。 しんとしていた。 だれがいるんだろう。 わたしはぶらさがっている板をもう一度見た。 それから足音を立てないようにして、そっと扉のあいだから庭に入っていった。しかられたら、すぐににげだすつもりだった。ちょっとだけ、のぞいてみたかった。──本文より。 小学五年のわたしと中一の兄は二ヶ月前、母の理想の新しい家、市の東側から西側へ引っ越してきた。この町で通い出した英会話スクールが休講だったので、わたしはふと通ったことのない道へ行ってみたくなる。道のずっと先には道路にまで木の枝が伸びている家があり、白い花がちらほらと咲いて・・・・。

日本絵本賞、講談社出版文化賞、ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、オランダ銀の石筆賞など受賞の酒井駒子氏による美しい装画にも注目!

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地図を広げて(2018年 偕成社)
父親と2人暮らしの鈴のもとに、母親が倒れたという知らせがとどく。母はそのまま亡くなってしまい、母親のもとにいた弟の圭が、鈴たちといっしょに暮らすことになった。 たがいに離れていた時間のこと、それぞれがもつ母親との思い出。さまざまな思いをかかえて揺れ動く子どもたちの感情をこまやかにとらえ、たがいを思いやりながら、手探りでつくる新しい家族の日々をていねいに描いた感動作。


ともだちのときちゃん(2017年 フレーベル館)
フレーベル館【おはなしのまどシリーズ】として出版された岩瀬成子の新刊『ともだちのときちゃん』は、イメージの広がりとこの年頃の子どもが経験する瑞々しい出会いにあふれています。(略)著者はそういう細部をみつめる子どもの感情をとてもよく描いていて、このお話しの最後のところでたくさんのコスモスの花にかこまれて青い空と雲をみつながら「ぜんぶ、ぜんぶ、きれいだねえ」とふたりの気持ちをつたえています。

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ちょっとおんぶ(2017年 講談社)
6才のこども特有のイノセントな感覚世界。この年ごろの人間だけが経験できる世界認識のあり方が本当にあるのかもしれない。あっていいとも思うし、ぼくはそれを信じていいようにも思います。名作「もりのなか」(マリー・ホール・エッツ)が普遍的に愛読されるのもこの点で納得できる気がするのです。
この本の帯にあるように、絵本を卒業する必要はないけれど絵本を卒業したお子さんのひとり読みや、読みきかせにぴったり!といえるかもしれません。どうぞ、手にとって読んでみてくださいね。

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マルの背中(2016年 講談社)
父と弟の理央が暮らす家を出て母と二人で生活する亜澄は、駄菓子屋のおじさんから近所で評判の“幸運の猫”を預かることに。野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化大賞受賞作家による感動作!

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ぼくが弟にしたこと(2015年 理論社)
成長の予兆を感じさせるように父と再会した麻里生には、次第に人混みにまぎれていく父の姿は特別な人には見えなかった。著者は帯にこう書き記している。どの家庭にも事情というものがあって、その中で子どもは生きるしかありません。それが辛くて誰にも言えない事だとしても、言葉にすることで、なんとかそれを超えるきっかけになるのでは、と思います。

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きみは知らないほうがいい(2014年 文研出版)
2015年度産経児童出版文化大賞受賞。
クニさんの失踪、クラスメートの関係性が微妙に変化するいくつかのエピソード、昼間くんの手紙、錯綜するその渦の中で二人の心の変化と移ろいを軸に物語は複雑な展開をみせる。
最終章、米利の手紙にはこう書いてある。それはぐるぐると自然に起きる渦巻のようなものだった。「いじめ」という言葉でいいあらわせない出来事があちこちで渦巻いている学校。
それでも明るい光に照らされている学校。そして苦い汁でぬるぬるとしている学校。学校よ、と思う。そんなに偉いのか。そんなに強いのか。そんなに正しいのか。わたしは手でポケットの上をぽんぽんとたたいた。

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あたらしい子がきて(2014年 岩崎書店)
前作『なみだひっこんでろ』の続編のようでもあり、“みき”と“るい”姉妹のお話となっているけれど、ストーリーそのものはそれとはちがうまったく新しいものである。 ここでは、お母さんのお母さんとその姉、つまり“おばあちゃん”と“おおばあちゃん”という姉妹がいて、知的障害のある57歳の“よしえちゃん”とその弟の“あきちゃん”の姉弟が登場する。 このように“みき”と“るい”姉妹の周りにもそれぞれの兄弟が重層的に描かれている。
第52回野間児童文芸賞、JBBY賞、IBBYオナーリスト賞を受賞。

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くもりときどき晴レル(2014年 理論社)
ひとを好きになるとどうして普通の気持ちじゃなくなるのだろう。誰でもこのような不思議な感情に戸惑いを感じることがある。恋愛感情とも云えないやりきれない気持ちの動きと戸惑いをともなう心理状態のことだ。 本著は、「アスパラ」「恋じゃなくても」「こんちゃん」「マスキングテープ」「背中」「梅の道」という6つの物語で構成された短編集であるけれど、思春期を向かえる少し前になるそれぞれの子どもの現在としてそのやわらかい気持ちの揺れを瑞々しいタッチで描いたもの。

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なみだひっこんでろ(2012年 岩崎書店)
今年度第59回課題図書に決定!

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ピース・ヴィレッジ(2011年 偕成社)


大人になっていく少女たちをみずみずしく描く
「最後の場面のあまりのうつくしさに言葉をうしなった。私たちは覚えている、子どもからゆっくりと大人になっていく、あのちっともうつくしくない、でも忘れがたい、金色の時間のことを。」 角田光代
基地の町にすむ小学6年生の楓と中学1年生の紀理。自分をとりまく世界に一歩ずつふみだしていく少女たちをみずみずしく描いた児童文学。
偕成社から好評新刊発売中!

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だれにもいえない(岩瀬成子著・網中いづる画、毎日新聞社)


小さな女の子のラヴストーリー。
点くんをきらいになれたらな、と急に思った。 きらいになったら、わたしは元どおりのわたしにもどれる気がする。 だれにも隠しごとをしなくてもすむし、 びくびくしたり、どきどきしたりしなくてもすむ。(本文より)
4年生の女の子はデリケートだ。 せつなくて、あったかい、岩瀬成子の世界。 おとなも、子どもたちにもおすすめの一冊。

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まつりちゃん(岩瀬成子著、理論社)
この作品は連作短編集という形式で構成され、抑制の効いた淡々とした表現で描かれているところが新鮮である。各篇ごとにちがった状況が設定され登場人物(老人から子ども)たちはそれぞれ不安、孤独、ストレスといった現代的な悩みを抱えている。その中で全篇を通して登場する“まつりちゃん”という小さな女の子は、天使のように無垢なる存在として現れる。その女の子と関わることによって物語は不思議なこと癒しの地平へと開示され、文学的世界が立ち上がるかのようだ。 岩瀬成子の新しい文学的境地を感じさせる魅力的な一冊ともいえる。

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オール・マイ・ラヴィング(岩瀬成子著、集英社)

■ 1966年、ビートルズが日本にやって来た!14歳の少女が住む町にビートルズファンは一人だけだった。 ■ 「オール マイ ラヴィング」とビートルズは歌う。聴いていると、だんだんわたしは内側からわたしではなくなっていく。外側にくっついているいろいろなものを振り落として、わたしは半分わたしではなくなる。ビートルズに染まったわたしとなる。 ■ 岩瀬成子の新刊、1月31日集英社から好評発売中。“あの時代”を等身大の少女の目でみつめた感動の書き下ろし長編小説 『オール・マイ・ラヴィング』 ■ ビートルズ ファン必見の文学はこれだ!

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そのぬくもりはきえない(岩瀬成子著、偕成社)
■ 日本児童文学者協会賞受賞


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朝はだんだん見えてくる(岩瀬成子著、理論社) ■ 1977年、岩瀬成子のデビュー作。本書はそのリニューアル版で理論社の『名作の森』シリーズとして再発行されたもの。

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