WORK・壁97-2

  • 2009.05.31 Sunday
  • 12:10
WORK・壁97-2



bummei HARADA
WORK・壁97-2/1997/合板、新聞、モルタル、鉄、アクリル樹脂塗料ほか/185×185cm


どくだみの花

  • 2009.05.31 Sunday
  • 12:07
どくだみの花



わが家のガレージの横に咲いているどくだみの花が今とてもきれいです。勢いが違いますね。白く突き出た花がきれいです。小さいころはこの独特のにおいがイヤでしたが、最近ではけっこう好きになりました。どくだみの葉の天ぷらもお茶も好きです。

錦帯橋の写生大会

  • 2009.05.30 Saturday
  • 17:09
錦帯橋の写生大会
 


今日は岩国市中央図書館でカミさんが講演をするというので、車で連れて行ったら図書館でこのような展覧会をやっていた。
錦帯橋の写生大会と称して、幼児から中学3年までの児童の優秀作品がここに展示されていた。入口に展示された中学3年の作品があまりにもひどい作品なので気になったこともあり、中に入って注意深く拝見した。
受験生等々を指導していて中学までの美術教育のあり方には以前から大いに疑問をもってはいたのだが、よくよく見ると小学5年あたりから表現がつまらなくなっていることがはっきりと確認できる。カミさんにそのことを聞くと文章表現も同じく小学5年からつまらなくなるという。

心理学的にも10〜11歳くらいに大きな変化をともなうことが指摘されているけれど、そのことをふまえて踏み込んだ指導があればと残念にも思う。
中学にいたっては表現が逆に退化している。これは指導のあり方にも大いに要因があることを直感させる。これらの作品には表現のおもしろさを伝えられていないことが確認できるからだ。やらせではなく、イキイキとした表現を取り戻すことを教育現場はあきらめないで欲しいと願うばかりだ。

WORK・壁97-1

  • 2009.05.30 Saturday
  • 13:22
WORK・壁97-1


bummei HARADA
WORK・壁97-1/1997/185cm×185cm/合板、新聞、モルタル、アクリル樹脂塗料ほか
第12回 現代日本絵画展[宇部市文化会館]



楠のスケッチ

  • 2009.05.29 Friday
  • 19:21
楠のスケッチ



今日はいつもの愛宕教室が使えないということで、楠の新緑を描きにやってきました。久しぶりのスケッチで来てみるとこれまでとは様子が少し違っていました。
ここは河上左京画伯もよく描いたところでもあります。河上画伯は経済学者の河上肇さんの弟にあたる人で、当教室の研究生であった松山トシコさんのお父さんです。
川面に映る楠がきれいなのですが、この日は風があり鏡のようにはなりませんでした。遠景の愛宕山は失われてしまいましたがここからの眺めはよくこちら側の楠の木陰があって暑い盛りでも絵を描くことができます。
皆さん熱心に描かれスケッチの楽しさを満喫しました。Yさんはこんな絵ができました。フラットな色面と写実的な描写による画面構成で新しい絵画の方向性を探ろうとしていますね。おもしろいです。

辻鮎里・花崎訓恵二人展/ART and JAZZ SESSION

  • 2009.05.29 Friday
  • 07:40

ART and JAZZの会場

昨日、ART and JAZZ SESSION 辻鮎里・花崎訓恵二人展が終了した。ともに県外に在住する作家とミュージシャンだけに新鮮でおもしろい内容だった。展覧会の会場で行なわれたジャズセッションも大いに盛り上がり久しぶりに本格的なライブを楽しんだ気がした。


繋がりを紐解けば、花崎訓恵さんが私の美術教室の研究生であることがことの発端であることがまず一つ。花崎さんは吉賀町(旧六日市町)で古民家(築100年くらいの典型的な農家の建物)を使って、天然酵母の手製のパンづくりと超高級レストランを経営している不思議な人だ。超高級レストランの所以はといえば、多方面での文化交流の場となっているレストランとして最高級なのだ。つまり、草の庭には不思議な人たちが出入りしていて飾り気のない里の自然と文化交流でおもてなしというわけだ。こんなレストランは他にはない。音楽から現代アート、食文化からこの国の農耕文化、福祉や教育関係者までいろいろな人のつながりがある。ここで過ごす時間は、閉塞状況に悩まされる私たちに対して里の伝統的な文化や自然に学ぶ機会を与えてくれる。

この展覧会のアーティスト・辻鮎里もミュージシャン・庄子勝治も鈴木俊介も超高級レストラン「草の庭」で繋がった。ここに繋がる人々はどういう訳か純粋な心(無垢な気持)をもっている。だから、新しい試みや表現をおもしろがろうとする雰囲気がある。展示された二人の作品をみていて感じることは、純粋無垢なる気持を大切にしているということだった。
 


ご覧のとおり花崎の作品はどれをみても画面にお行儀よくおさまることなく常にはみ出してしまっている。絵を描きはじめて2年半くらいになるが当初からこの調子でとにかく描きっぷりのいいのが印象的だった。それは、ヴラマンクや日本の佐伯祐三などのフォーヴィズム(野獣派)を感じさせるところもあるのだが、最近はプリミティブな感覚こそこの人がもち合わせた資質のように感じている。もともとそういう側面をもっていたのだが、それが顕著になってきたということかもしれない。そういう意味では山口のアンリ・ルソーと呼んでいる同研究生に大先輩の高林キヨがいる。花崎訓恵は高林をしのぐ勢いで絵を描いている。
 


一方の作家、辻鮎里の作品は一瞬ドキッとする画風でみる人を驚かす。武蔵野美大で映像を学んだにもかかわらず身体表現と絵画表現に踏み込んだ。この人の作品がどうして刺激的かといえば、おそらく私たちの深層心理(無意識)のところにある喜怒哀楽の部分に光をあてるからだろう。かつての超現実主義者たちもこのように無意識の世界に人間の本質を探ろうとした。アイロニーやパラドックス、トロンプルイユ(だまし)、オートマティズム(自動速記)の手法でそのことを具現化しようとしたのだった。辻鮎里が超現実主義者であるかどうかは私の知るところではないけれど、意識の底にある無垢なるものを大切にしていることは間違いない。それは時として怒りとなり喜びともなる。また、哀しみとなって現れるしユーモラスな楽しさをともなう表情にもなる。『タイル』『どうにもなる人』『ハイヒールのアイスクリーム』『菊』などの作品がそのことを物語っている。一方、私が注目したいのは『パンジー』や『観葉植物』『言葉』などにみられるオールオーバーな画面構成であった。彼女のこれからの可能性の一つとしてこの均質空間に注目した人は多かったのではないか。


23日のジャズライブは50人の観衆の中で行なわれ、気持の入った演奏は人々を喜ばせた。庄子勝治(サックス)の気づかいと暖かさの中で、鈴木俊介(ピアノ)は半年前に「草の庭」で聞いた時とは見違えるほど成長していて私を驚かせた。やさしさと暖かさのこもった4人のコラボから伝わってくる大切なものがそこには確かにあった。


磯崎有輔展

  • 2009.05.28 Thursday
  • 13:18
磯崎有輔展



東急東横線「学芸大学駅」西口より「放送大学東京世田谷学習センター」方向へ12分、近接の下馬公園より三軒目の住宅、島田画廊(東京都世田谷区下馬6−43−5、tel.03-5430-4065)にて磯崎有輔展があります(2009年5月28日thu―6月13日sat)
アートドキュメント2004錦帯橋プロジェクトに参加されたアーティストであり、岩国の皆さんともお馴染みの作家です。島田画廊は同じく錦帯橋プロジェクト参加アーティスト・西雅秋さんともかかわりのあるギャラリーです。乞う、ご期待を!

SAPY2010プレ事業、第二弾!!

  • 2009.05.27 Wednesday
  • 14:32
SAPY2010プ レ事業、第二弾!!



SAPY2010プレ事業、第二弾!!koso HARANAKA Exhibition 「原仲裕三展」が吉賀町柿木村「道の駅」の傍にある「ふれあい会館」で開催されます。
来年の秋に計画されている「里山アートプロジェクト2010」のプレイベントとして行なわれるもので、先ごろ行なわれた「原田文明展」(六日市沢田「草の庭」、エコビレッジかきのきむら同時開催)につづく第二弾となります。

これからもプレイベントは続きますので、皆さん!どうぞご期待ください。現代アートで里のおもしろさと可能性をみつけよう。里の文化に学び美しい自然を舞台とする現代アートの動きをつくろう。里山にアートがたわわに実るとき何かが起こると思います。

大北利根子展

  • 2009.05.27 Wednesday
  • 13:17
大北利根子展



JR石川町駅より徒歩で1分、みなとみらい線元町・中華街駅より7分のところにあるATELIER・K(横浜市中区石川町1−6三甚ビル3階、tel.045−651−90379)にて大北利根子さんの展覧会が行われています。(5月31日まで)
私の古くからの友人で国内外を問わず、精力的に活動しているアーティストの1人です。

大ちゃんと美術教室

  • 2009.05.26 Tuesday
  • 12:33
大ちゃんの絵

大ちゃんが原田美術教室に通いはじめてどのくらいになるのだろう。大ちゃんとの付き合いは、彼が幼稚園くらいの時からだからかれこれ20年になる。だから、大ちゃんはもう25才を過ぎている。大ちゃんは自閉症なのだが、特有の自傷行為や多動的なところがない。気のやさしい、明るい性格で小さな子どもたちと一緒に絵を描くことができる。最近は、教室への行き帰りに作業所の仕事なのか空き缶を集めている。空き缶についている紙のラベルを教室のトイレで丁寧にはがしている。

ご覧のとおり、大ちゃんの絵はユーモラスで独特のおもしろさがあり、造形的にも色彩的にも絶妙のバランスで成り立つとてもいい作品である。だから、私は大ちゃんに個展をやるようにすすめている。

教室に来ている小さな子どもたちが私に聞いてくる。「大ちゃんはどうして話ができないの?」と聞いてくる。私は自閉症について話をする。そして、ほかにも障害のある子どもたちがいることを話す。最近の大ちゃんは少し手を抜いてさぼることを覚えてきた。「大ちゃん、できたのか?」と私がいうと、「ト、ト、トイレに行ってくる」といって部屋を出るのだ。少しするとまた帰ってくる。

私は大ちゃんが出来ないことをなるべく小さな子どもたちに手伝わせることにしている。子どもたちと大ちゃんを仲良くさせたいと思っている。自閉症の子どもたちがいることを知って欲しいと思っているのだ。大ちゃんは野球が好きなのでみんなでよく手打ち野球をして遊んだ。私がピッチャーをやり大ちゃんが打てるところに投げるとヒットする。ヒットすると大ちゃんは嬉しそう にしているが走らないのでアウトになる。いつだったか、子どもたちの展覧会をした時、大ちゃんは30才まで絵を描くといっていた。どうして30才なのかはわからない。

ある時期、障害のある子どもたちの保護者から美術指導をして欲しいと依頼されたことがあって、いろいろな障害をもつ子どもたちに接してきたが大ちゃんとは特別ながい付き合いになった。

お父さんの仕事の転勤で宇部に移ったエミちゃんともながい付き合いだ。エミちゃんは3才のとき髄膜炎を患い軽い癲癇(てんかん)症状と精神薄弱の障害を残していた。2006年の国民文化祭で宇部の彫刻に関わった時、久しぶりにエミちゃんと会った。ご家族にはいろいろ作品制作に協力していただき、おまけにご自宅に招かれご馳走にもなった。その子はもう30歳くらいになるのだがボーリングの全国大会で頑張っているとのことだった。「文明先生も頑張ってね」といわれ互いに励ました。お母さんは底抜けに明るくパワーのある人で福祉活動にも熱心な人だった。

美術教室のようすもその都度かわり、どういう訳か男の子ばかりの時もあった。その頃は作品を完成させた後みんなで手打ち野球をして遊んだ。高校野球で甲子園に出場した者もいる。この頃はむしろ作品制作の後にやるこの野球や室内サッカーが楽しみとなっていた。今から思えば、よく怪我をしなかったものだと感心する。室内サッカーといってもボールは手製の新聞紙をガムテープで丸めただけのいびつな形。まともには転がらないところがおもしろいのだ。私も若かったし汗だくになって遊んだ。お迎えが来るとお仕舞いになるのだが少しでも遊びたいものだから出来るだけ遅く来てくれと言われると母親は嘆いていた。その子どもたちももう30才くらいになるから早いものだ。

缶けり遊びでは、最初は見つからないように隠れてばかりの子どもも自分の味方を助けて生き返らせることのおもしろさを知ると夢中になる。私はときどき手を抜いて5歳くらいの小さな子には一歩とどかないところで蹴られるようにする。私が悔しがると、子どもは何回でもやろうと夢中になる。







 


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原田美術教室の活動


♛ 第16回絵画のいろは展
2023年11月15日wed〜11月19日sun
10:00〜18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール


この展覧会は、絵を描きはじめて間もない人から山口県美展・岩国市美展など他の美術コンクールや個展などで活躍している大人に加えて、これまでTRY展として活動してきた子どもたちを含む初心者から経験者までの作品を一堂に展示する原田美術教室の研究生およそ20名で構成するものです。 アトリエや教室での日ごろの研究成果を発表すると同時に、人と人、表現と表現のふれあうなかで単に技術の習得のみならず、絵を描くことで何を考え、何を発見することができるかということから、「文化的な営みと豊かさ」あるいは「活力と潤いのある生活」とは何か、という問いについて考える契機となることを願っています。 「絵画のいろは」とは、このように制作上の技術の問題だけでなく、日常生活での活力や潤いのある生活のあり方を考える実践的問いかけに他ならないのです。 特に今回は子どもたちの作品を含めて広く深くそのことを考える風通しのいい構成となっています。研究生として親睦を兼ねたコミュニケーションを大切にし、互いの作品を認める楽しさや表現の多様性について考え、アートのおもしろさを伝えることで地域の芸術文化活動の普及と発展に寄与したいと願うものです。














子どもの作品が大人気








♛ グループ小品展2024
2024年10月3日(水)〜10月6日(日)
10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール



この展覧会グループ小品展は、絵を描きはじめて間もない初心者から山口県美展・岩国市美展など他の美術コンクールや個展などで活躍している経験者までを含む原田美術教室の研究生で構成され、絵画のいろは展とともに隔年で開催するものです。 今回のグループ小品展では、日ごろの研究成果を発表すると同時に、人と人、表現と表現のふれあうなかで単に技術の習得のみならず、絵を描くことで何を考え、何を発見することができるかということ。そして、「文化的な営みと豊かさ」あるいは「活力と潤いのある生活」とは何か、という問いについて考えることを目的としています。 また、グループ研究生として互いの親睦を兼ねたコミュニケーションを大切にし、互いの作品を認める楽しさを発見すると同時に表現の多様性について考え、アートの楽しさを伝えることで地域の芸術文化活動の普及と発展に寄与し貢献したいと願うものです。









 

♛ 山口県美術展覧会2019 2019年2月14日(木)−3月3日(日)9:00−17:00(入館は16:30まで) 
休館日:2月18日(月)、25日(月)
観覧料/一般:500(400)円 学生:400(300)円( )内は20人以上の団体料金
*18歳以下は無料 *70才以上の方、中東教育学校、高等学校、特別支援学校に在学する方等は無料 *障碍者手帳等をご持参の方とその介護の方1名は無料
山口県立美術館

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優秀賞 藤本スミ

入選 玉井康子

入選 中村みどり



佳作賞 浜桐陽子

原田文明の現況2021展


2021年5月19日wed−5月23日sun
10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール



本展は1990年代のはじめ頃から具体絵画として精力的に発表してきた一連の絵画作品とドローイングとインスタレーションによる新作13点で構成するのものです。













原田文明展 ドローイングインスタレーション2018


2018年11月21日wed−25日sun 10:00−18:00
シンフォニア岩国企画展示ホール











ドローイングインスタレーションは、ここ十数年にわたって絵画表現の可能性について考えてきた一連の営為の中で、偶然とも必然ともいえる結果として発見されたものです。
私はこれまで「具体絵画」と称して、物質(素材)が表現目的の手段として扱われるのではなく、物質のあり方それ自体を色彩やフォルムと等しく絵画の重要な構成要素とする一連の作品を制作してきました。
ここでは行為と物質がもたらす一回性の出来事さえも絵画を成立させる重要な要素として捉え、作為的な感性によって空間へと展開されています。いうまでもなく、そのことによって生成される新しい意味と存在の可能性をリアルな知覚的世界として位置づけ、形而上学的な意味を問いかける主知的な営為と考えてきたのです。
さらに、その表現形式のあり方は平面的な二次元の世界から室内空間(場所)を構成する三次元的な世界へとその機能性を拡張し、ドローイングインスタレーションともいうべき様式へと変容させ意識化されてきたとも云えます。
私にとってもはや絵画は多元的な空間へと自在に移ろうイリュージョンの世界へと変容してきたと云うべきかもしれません。それは身体性を意識したメタフィジカルな実践として存在論的に見えかくれする場面への接近であり、換言すれば世界を包み込む現存(リアルな世界)への希求の現われというべきかも知れないのです。
本展はこれまでの多岐にわたる活動をふまえてたどりついた新作ドローイングインスタレーションの様式にさらに色彩的要素を取り入れることによって新境地への挑戦と可能性を探求する原田文明の現況とその一端を示すものです。

里の芸術一揆「里山 ART Project 吉賀」




本プロジェクトは隔年式のアートビエンナーレとして、将来の「地域」「文化」「くらし」を考える文化的なムーブメント(運動)をつくることを目的とするものです。また、地域の農耕文化や伝統に学び、芸術文化の振興発展と普及のみならず、「生活と芸術」「過去と現在」「人と地域」の交流を軸とする文化による地域づくりについて考えるものです。 このことは、吉賀町がこれまで取り組んできた自然との共存共生を願うエコビレッジ構想と合わせて、人間の営みとしての文化と里山の自然について考えることであり、里山に潜在する魅力とその可能性を再確認し文化意識の変革と活性化を推進するものです。 今回は、現代アートの最前線で活躍する8名のアーティストによる最新作を現地で制作し、地域住民とともにワークショップや生活文化など多方面での活発な交流が実現されるものと考えています。 2010年10月開催予定。

岩瀬成子話題の本棚


ジャングルジム(2022年ゴブリン書房)


ひみつの犬(2022年岩崎書店)
「いい人間になるのって難しいよ」とお姉ちゃんは言った。(p238)
児童文学として哲学的な問いをふくむシリアスな問題を子ども特有の感覚と生き生きとした表現で描いた長編物語。


わたしのあのこあのこのわたし(2021年 PHP研究所)

すれちがいながらも 助け合う ふたりの物語

秋ちゃんはすごく怒っていた。「とりかえしがつかない」と秋ちゃんはいった。
「二度と手に入らない」ともいった。どの言葉もわたしに命中した。
きいている途中から心臓がどきどきしはじめた。
わたしは秋ちゃんの怒った顔だけを見ていた。
秋ちゃんの怒りがどんどんふくらんでいくのがわかった。
秋ちゃんはわたしをゆるしてくれないかもしれない。


ネムノキをきらないで(2020年 文研出版)
この物語はおじいさんの家の庭にあるネムノキをきる話からはじまる。ぼくはネムノキをきることに反対だが枝がのびすぎてあぶなくなったから樹木医さんに相談して剪定してもらうことになった、ということだ。
「だめ、だめ。」と、ぼくは泣きながらいった。「こまったなあ。」とおじいさんはいった。お母さんはぼくの頭をなでようとした。ぼくはその手をふりはらった。「ばかだ。おとなはみんな大ばかだ。」ぼくにはもっといいたいことがあった。ネムノキについて。でも、どういえばいいかわからなかった。(…略)胸のなかは嵐のようだった。いろいろな気もちがぶつかり合っていて、どうすればもとのような落ち着いた気もちになれるのかわからなかった。(本文よりp16〜17)
家に帰った伸夫はつぎの朝、自分の部屋をでるとき何も知らずに柱をとおりかかったイエグモをつぶしてしまったことに気づく。


おとうさんのかお(2020年 佼成出版)

岩瀬成子の最新作「おとうさんのかお」が佼成出版社から出版されました。

「遠くを見ろっていったんだよね。おとうさん」と、わたしはいいました。「え」と、おとうさんはわたしをみました。「わたし、思いだした。このまえ、大川で思いだしかけていたこと。じてん車のれんしゅうをしていたときのこと。おとうさんは、『目の前ばっかり見てちゃだめ。もっと先のほうを見なきゃ』っていったよ」「そうだったかな」「『先のほうだけでもだめ、ときどき、ずっと遠くを見るんだ。ずっとずっと遠くだよ。山のむこう遠く』っていったよ」(本文よりp87)


もうひとつの曲り角(2019年 講談社)
野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化賞大賞、IBBYオナーリスト賞など数々の賞を受賞する岩瀬成子氏の最新長編作品。

柵には半開きになった木の扉がついていて、その扉に「どうぞお入りください」と青色のマジックで書かれた板がぶらさがっていた。 「いやだ。あたしはそんなところへは、ぜったいに入らないから」ときこえた。 えっ。どきんとした。 庭木のむこうからだった。わたしにむかっていったんだろうか。 わたしは耳をすまして、木々にさえぎられて見えない庭のようすをうかがった。 しんとしていた。 だれがいるんだろう。 わたしはぶらさがっている板をもう一度見た。 それから足音を立てないようにして、そっと扉のあいだから庭に入っていった。しかられたら、すぐににげだすつもりだった。ちょっとだけ、のぞいてみたかった。──本文より。 小学五年のわたしと中一の兄は二ヶ月前、母の理想の新しい家、市の東側から西側へ引っ越してきた。この町で通い出した英会話スクールが休講だったので、わたしはふと通ったことのない道へ行ってみたくなる。道のずっと先には道路にまで木の枝が伸びている家があり、白い花がちらほらと咲いて・・・・。

日本絵本賞、講談社出版文化賞、ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、オランダ銀の石筆賞など受賞の酒井駒子氏による美しい装画にも注目!

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地図を広げて(2018年 偕成社)
父親と2人暮らしの鈴のもとに、母親が倒れたという知らせがとどく。母はそのまま亡くなってしまい、母親のもとにいた弟の圭が、鈴たちといっしょに暮らすことになった。 たがいに離れていた時間のこと、それぞれがもつ母親との思い出。さまざまな思いをかかえて揺れ動く子どもたちの感情をこまやかにとらえ、たがいを思いやりながら、手探りでつくる新しい家族の日々をていねいに描いた感動作。


ともだちのときちゃん(2017年 フレーベル館)
フレーベル館【おはなしのまどシリーズ】として出版された岩瀬成子の新刊『ともだちのときちゃん』は、イメージの広がりとこの年頃の子どもが経験する瑞々しい出会いにあふれています。(略)著者はそういう細部をみつめる子どもの感情をとてもよく描いていて、このお話しの最後のところでたくさんのコスモスの花にかこまれて青い空と雲をみつながら「ぜんぶ、ぜんぶ、きれいだねえ」とふたりの気持ちをつたえています。

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ちょっとおんぶ(2017年 講談社)
6才のこども特有のイノセントな感覚世界。この年ごろの人間だけが経験できる世界認識のあり方が本当にあるのかもしれない。あっていいとも思うし、ぼくはそれを信じていいようにも思います。名作「もりのなか」(マリー・ホール・エッツ)が普遍的に愛読されるのもこの点で納得できる気がするのです。
この本の帯にあるように、絵本を卒業する必要はないけれど絵本を卒業したお子さんのひとり読みや、読みきかせにぴったり!といえるかもしれません。どうぞ、手にとって読んでみてくださいね。

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マルの背中(2016年 講談社)
父と弟の理央が暮らす家を出て母と二人で生活する亜澄は、駄菓子屋のおじさんから近所で評判の“幸運の猫”を預かることに。野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化大賞受賞作家による感動作!

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ぼくが弟にしたこと(2015年 理論社)
成長の予兆を感じさせるように父と再会した麻里生には、次第に人混みにまぎれていく父の姿は特別な人には見えなかった。著者は帯にこう書き記している。どの家庭にも事情というものがあって、その中で子どもは生きるしかありません。それが辛くて誰にも言えない事だとしても、言葉にすることで、なんとかそれを超えるきっかけになるのでは、と思います。

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きみは知らないほうがいい(2014年 文研出版)
2015年度産経児童出版文化大賞受賞。
クニさんの失踪、クラスメートの関係性が微妙に変化するいくつかのエピソード、昼間くんの手紙、錯綜するその渦の中で二人の心の変化と移ろいを軸に物語は複雑な展開をみせる。
最終章、米利の手紙にはこう書いてある。それはぐるぐると自然に起きる渦巻のようなものだった。「いじめ」という言葉でいいあらわせない出来事があちこちで渦巻いている学校。
それでも明るい光に照らされている学校。そして苦い汁でぬるぬるとしている学校。学校よ、と思う。そんなに偉いのか。そんなに強いのか。そんなに正しいのか。わたしは手でポケットの上をぽんぽんとたたいた。

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あたらしい子がきて(2014年 岩崎書店)
前作『なみだひっこんでろ』の続編のようでもあり、“みき”と“るい”姉妹のお話となっているけれど、ストーリーそのものはそれとはちがうまったく新しいものである。 ここでは、お母さんのお母さんとその姉、つまり“おばあちゃん”と“おおばあちゃん”という姉妹がいて、知的障害のある57歳の“よしえちゃん”とその弟の“あきちゃん”の姉弟が登場する。 このように“みき”と“るい”姉妹の周りにもそれぞれの兄弟が重層的に描かれている。
第52回野間児童文芸賞、JBBY賞、IBBYオナーリスト賞を受賞。

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くもりときどき晴レル(2014年 理論社)
ひとを好きになるとどうして普通の気持ちじゃなくなるのだろう。誰でもこのような不思議な感情に戸惑いを感じることがある。恋愛感情とも云えないやりきれない気持ちの動きと戸惑いをともなう心理状態のことだ。 本著は、「アスパラ」「恋じゃなくても」「こんちゃん」「マスキングテープ」「背中」「梅の道」という6つの物語で構成された短編集であるけれど、思春期を向かえる少し前になるそれぞれの子どもの現在としてそのやわらかい気持ちの揺れを瑞々しいタッチで描いたもの。

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なみだひっこんでろ(2012年 岩崎書店)
今年度第59回課題図書に決定!

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ピース・ヴィレッジ(2011年 偕成社)


大人になっていく少女たちをみずみずしく描く
「最後の場面のあまりのうつくしさに言葉をうしなった。私たちは覚えている、子どもからゆっくりと大人になっていく、あのちっともうつくしくない、でも忘れがたい、金色の時間のことを。」 角田光代
基地の町にすむ小学6年生の楓と中学1年生の紀理。自分をとりまく世界に一歩ずつふみだしていく少女たちをみずみずしく描いた児童文学。
偕成社から好評新刊発売中!

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だれにもいえない(岩瀬成子著・網中いづる画、毎日新聞社)


小さな女の子のラヴストーリー。
点くんをきらいになれたらな、と急に思った。 きらいになったら、わたしは元どおりのわたしにもどれる気がする。 だれにも隠しごとをしなくてもすむし、 びくびくしたり、どきどきしたりしなくてもすむ。(本文より)
4年生の女の子はデリケートだ。 せつなくて、あったかい、岩瀬成子の世界。 おとなも、子どもたちにもおすすめの一冊。

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まつりちゃん(岩瀬成子著、理論社)
この作品は連作短編集という形式で構成され、抑制の効いた淡々とした表現で描かれているところが新鮮である。各篇ごとにちがった状況が設定され登場人物(老人から子ども)たちはそれぞれ不安、孤独、ストレスといった現代的な悩みを抱えている。その中で全篇を通して登場する“まつりちゃん”という小さな女の子は、天使のように無垢なる存在として現れる。その女の子と関わることによって物語は不思議なこと癒しの地平へと開示され、文学的世界が立ち上がるかのようだ。 岩瀬成子の新しい文学的境地を感じさせる魅力的な一冊ともいえる。

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オール・マイ・ラヴィング(岩瀬成子著、集英社)

■ 1966年、ビートルズが日本にやって来た!14歳の少女が住む町にビートルズファンは一人だけだった。 ■ 「オール マイ ラヴィング」とビートルズは歌う。聴いていると、だんだんわたしは内側からわたしではなくなっていく。外側にくっついているいろいろなものを振り落として、わたしは半分わたしではなくなる。ビートルズに染まったわたしとなる。 ■ 岩瀬成子の新刊、1月31日集英社から好評発売中。“あの時代”を等身大の少女の目でみつめた感動の書き下ろし長編小説 『オール・マイ・ラヴィング』 ■ ビートルズ ファン必見の文学はこれだ!

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そのぬくもりはきえない(岩瀬成子著、偕成社)
■ 日本児童文学者協会賞受賞


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朝はだんだん見えてくる(岩瀬成子著、理論社) ■ 1977年、岩瀬成子のデビュー作。本書はそのリニューアル版で理論社の『名作の森』シリーズとして再発行されたもの。

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